裏ジャニB.R

短め。錦戸までアップ。
言い訳ですが、コレって映像だと面白かったんですけど、いざ文章に起こすと、どの子も「歩く→見つかる→逃げる」の繰り返しで、展開が単調なことに気がつきました(苦笑)。
いつ終わるんだコレ…。


5.
残り47分。
横山・スバルがパパラッチと第一次遭遇を果たしていたその頃、二人一組の安田・大倉両名は、国立競技場から南下し、通称“キラー通り”を移動していた。
前方に見える歩道橋、通りを挟んで反対側の歩道、通り過ぎる店の中、行き交う車やバイク―。
常に誰かに見られている、いや既に敵に見つかっているのではないか。
大倉は先ほどから、視線を感じるような気がしてどうにも落ち着かない。
―それは決して錯覚などではないのだが、二人は知る由もなく。
キラー通りってなんかイヤな響きやな」
大倉がビクビクとあたりを伺いながら呟いた。
ほんまや。“キラー”ってなんか、ごっつ殺されそうやん……。
安田が同意しようとしたその時、尻ポケットに入れていた携帯電話がピリピリと無機質な電子音を立て、背筋がビクリと跳ね上がった。
「うわっビックリした」
慌てて電話をとると、
『今どこおるん?』
電話の主は渋谷スバルであった。
その柔らかい、懐かしい声に、安田の顔に自然と笑みが浮かぶ。
「なにどしたん?」
『パパラッチに会うた?』
もう一度問いかけてきたスバルの声は、心なしか息を切らせているように聞こえ、不安がよぎる。
しかしどうやら間一髪で逃げ切ったらしいことを知り、ほっとした。
「こっちはまだ全然会うてないなぁ」
『めっちゃ追い掛け回されたで!』
スバルとそんな会話を交わしている間、二人は少し油断していたのかもしれない。
じりじりと、敵に間合いを詰められていたことに、電話中の安田はもちろん、隣を歩く大倉もまた、気付いていなかった。
―が。
さっと、周りの空気が変わった気がした。
反射的に二人が振り返る。
たった今通り過ぎたばかりの歩道橋の階段脇から、見慣れぬ迷彩服が飛び出してきた。
敵だ!!
「来たっ!!」
「うわぁぁーーーーー!!」
弾かれたように二人とも走り出す。
「うわぁっヤバイ、ヤバイ!!」
「ぎゃぁぁっ!うわぁぁっ!」
意識せずとも口から勝手に、自分じゃないみたいな奇声が漏れて、どっちの声かもよくわからないくらいに混乱してしまう。
『逃げろ!とにかく走れ!!』
かろうじて耳に充てていた電話から、スバルの力強い声が聞こえ、安田は泣きそうになりながらも、携帯電話を強く握り締めひたすら走った。
走って走って、走り続けた。


パパラッチの追走をかわし、ようやく逃げ切れたとわかったのは、渋谷近くまでたどり着いてからのことだった。
「なにこれめっちゃ怖い!なんなん、突然やんか」
恐怖を通り越し今頃怒りがこみ上げてきたらしい大倉は、さっきから腕組みをしてご立腹の様子。
安田はというと、
「逃げ切ったぁ!」
と、繋がったままにしておいた電話の向こう、スバルに安堵の報告をすると、思わずその場にへたり込んだ。
【残り7人】


6.
「さっき、安田・大倉が通ったルートを、今度は錦戸が通過中でーす」
本部より再び連絡が入った。
さっきは追跡中に、うっかりこのトランシーバーを落としてしまったため、安田・大倉をみすみす取り逃がしてしまったのだ。
今度はミスをするわけにはいかない。
迷彩服の男は、たった今散々走った道を戻り、再び定位置の歩道橋付近で次の獲物の様子を伺う。この辺の歩道橋は、階段が洒落た落書きだらけのコンクリートの壁で囲まれており、こうして上り口に潜んでいても、向こうからは死角になって見えないはずだ。見張るには好都合である。
―来た。
ベージュのブルゾンに、グリーンと白のストライプが鮮やかなインナーを着た黒髪の男、錦戸亮が遠くから歩いてくるところが見えた。
同行スタッフとカメラのおかげでその姿は否でも目立つので、そう簡単に見失うことはない。
しかしそれは、こっち側も同様で―。
ふと、錦戸の足が止まった。
ヤバイ!
すぐさま柱の影に身を隠すが、こちら側の同行スタッフを見られてしまったらしい。
首をかしげ、訝しげにこちらを見つめたのち、
「何かおった」
錦戸が低く呟く。
完全に感づかれてしまったようだ。
さて、どう出るか…。
錦戸がこの歩道橋を通過するまでは、まだ少し距離がある。もしかしたら、このまま今来た道を引き返す可能性もあり、今、迂闊に飛び出すのは得策ではないように思えた。
迷彩服の男は、とりあえず歩道橋の上から相手の出方を探ることにした。
急いで階段を上り、歩道橋のフェンス越しに下を見下ろす。
「……あれ?」
男は我が目を疑った。
さっきまでそこにあった筈の錦戸の姿が、忽然と消え失せていたのだ。
男は慌てて歩道橋の反対側を見やる。すると、錦戸の同行スタッフと思われる、重そうなカメラを肩に担いだ男が走って視界から消えるところであった。
「くそっ!!」
錦戸はとっくに走り去った後だったのだ。完全に裏をかかれた。
安田・大倉に続いて錦戸までも、またまんまと取り逃がしてしまった。
本部に報告しなければ……。男はがっくりと頭を垂れた。


錦戸はようやく走る速度を緩めて、肩で息をしながら後方を見やる。
もちろん、追走する人間の姿はない。
早い段階で強行突破を決めた錦戸の判断は、見事に吉と出たのだ。
錦戸は既に誰もいない後方にもう一度一瞥をくれると、キッと前方を見据え、
「アイツほんま鬱陶しいわ」
と吐き捨てるように呟いた。
さっきまで、少し心細いと思っていた弱い気持ちは、今この瞬間すっかりどこかへ飛んでしまっていた。
【残り7人】


内の出番は都合上、この後に持ってくることにしました。